煮干しの値は、よく動きます。半年で見違えるほど変わることもあります。
「不漁だから高い」。それはそのとおりです。ただ、漁の量だけでは説明のつかない動き方をすることがあります。獲れていないわけではないのに下がらない。逆に、少し獲れただけで急に落ち着く。
この記事では、相場が動くとき、市場で実際に何が起きているのかを書きます。仕入れる側から見た話です。
値を決めているのは、在庫を持っていない人です
いちばん大事なところを先に書きます。
煮干しの相場は、在庫を持っていない人の価格に左右されます。
みなさんが一律に在庫を持っていれば、相場は安定します。手元にあるのですから、慌てて買う必要がありません。ところが、そうはなりません。在庫が切れている人と、まだ余裕のある人がいる。そして値をつけるのは、いつも切れている側です。
余裕のある人は「その値段なら見送る」と言えます。切れている人は言えません。言えない人の事情が、そのまま値になります。
最初に手を挙げるのは、高くても採算が合う人です
品薄になったとき、まず買うのは誰か。
高価格で買っても採算が取れる方です。
売値を上げられる商売、あるいは煮干しが原価の中で小さな割合を占めるにすぎない商売。そういう立場の方は、多少高くても手が出せます。ですので、値が上がり始めた最初の局面は、この方々が引き取っていきます。
もうひとつ、買わなければならない人がいます
そしてもう一種類。納品しないとペナルティを受ける方です。
取引先に納める約束がある。納められなければ違約になる。この立場の方には、値段を見て見送るという選択肢がそもそもありません。いくらであっても買います。
この2種類の買い手が、高いところでまず動きます。相場の上のほうは、この方々がつくっています。
そのあと、値は下がり始めます
高値で買う人が一巡すると、値は下がり始めます。ここまでは、どなたが想像されるとおりだと思います。
問題はこの先です。
量が少ないと、下がりきりません
下がり始めても、そもそもの量が少ないと、その方々の手当だけではけてしまいます。
つまり、高くても買う人たちが買った時点で、もう残っていない。値を下げてまで売る必要がない。そうなると価格は高いところで止まります。
「不漁だから高い」の中身は、実はこれです。獲れないから高いのではなく、獲れた分が高く買える人のところで終わってしまうから、下がる場面が来ない。ここが、外から見ていて分かりにくいところだと思います。
メジャーでない煮干しは、もっと激しく動きます
ここまではカタクチイワシのような、量のある煮干しの話です。
いわし以外の、メジャーではない煮干しの場合はもっと深刻です。
もともとの流通量が少ないため、少し需要が動いただけで値が跳ねます。買い手が数人増えるだけで、相場の景色が変わってしまいます。
大手が動くと、値が2倍になることがあります
実際にあった話です。
大手のチェーン店がある煮干しを欲しがったことで、価格が2倍にまでなってしまったケースがあります。
店舗数の多いチェーンが、ひとつのメニューにその煮干しを使うと決める。それだけで、日本中の流通量に対して桁の違う量が必要になります。もともと少ない煮干しであれば、市場にあるものを全部集めても足りないということが起こります。
そうなると、値は上がるところまで上がります。そして、その値でも買う人がいる限り、下がりません。
小さな会社は、太刀打ちできません
正直に書きます。当店のような小さな会社では、こうなるととても太刀打ちできません。
資金の量が違います。買える量が違います。値がついたところで手を挙げ続けることができません。悔しいことですが、そういうものです。
ですので当店は、そういう相場になったときに何ができるかを考えるようにしています。無理に競り合って、その価格をお客様に転嫁するのは、当店のやり方ではないと思っています。
相場が動いているとき、当店がしていること
入荷のご連絡をお受けしています
品切れの商品には入荷連絡の登録をご用意しています。ご登録いただければ、入荷したときにご連絡します。相場が落ち着いて仕入れられたとき、まずご登録の方にお知らせが届きます。
代わりになるものをご案内しています
カタクチイワシが手に入らないとき、当店はマイワシ原料の平子煮干しやうるめ煮干しをおすすめしています。同じ煮干しだしとしてお使いいただけます。
「入りませんでした」で終わらせず、いま手当てできるもので現場が回るようにご案内する。それが問屋の仕事だと思っています。
出荷直前まで冷凍で保管しています
相場が高いときほど、届いたものの状態が効いてきます。当店では出荷の直前まで冷凍で保管しています。常温で置かれたものに比べ、香りの抜けがありません。
お客様にひとつだけ、お願いがあります
お使いの煮干しが決まっている場合は、早めにお声がけいただけると助かります。
この記事に書いたとおり、相場は「切れている人」の事情で動きます。切れてから探すと、いちばん高い局面に当たりやすくなります。先の見通しをうかがえていれば、当店も手当ての仕方を変えられます。
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