業務用の花かつおを置いていない理由|削り節がかさばるということ

「花かつおはありませんか」と聞かれることがあります

当店は、だし用の乾物を業務用にお売りしている問屋です。かつお節も扱っております。それなのに、花かつお(薄削り)だけはご用意しておりません。

お問い合わせをいただくたびに「置いていないんです」とお答えするのですが、理由をきちんと書いたことがありませんでした。今回まとめておきます。

味が悪いからではありません。仕入れられないからでもありません。理由は、袋がかさばるからです。

かつお厚削り(枕崎産)

薄削りの袋には、窒素が詰まっています

薄削りの袋を手に取ったことのある方はご存じだと思いますが、あの袋はぱんぱんにふくらんでいます。中身は軽いのに、袋だけが立派です。

あれは空気ではありません。袋の中の酸素を窒素に置き換えて充填してあります。

理由は三つあります。

ひとつは、削った花を壊さないため。 これがいちばん大きい理由です。薄く削ったかつお節は、指で軽く挟んだだけで砕けるほど脆いものです。袋がぺたんこのまま箱に詰めて重ねれば、下のほうは粉々になってしまいます。ガスを詰めて袋を膨らませておけば、それがクッションになって、輸送中も積み重ねても花が守られます。

ふたつめは、きれいに見せるため。 薄削りはふわりと広がる形が身上ですので、袋の中で押しつぶされていては値打ちが伝わりません。

三つめは、常温で長く保管できるようにするため。 削った節は表面積が大きく、酸素に触れると香りが飛び、色も変わります。窒素に置き換えておけば、常温の棚に長く置いても風味が保てます。

どれも理由のある造りです。おかしなことをしているわけではありません。むしろ、こうする以外に薄削りを無事に届ける方法がないというのが実際のところだと思います。

ただ、この三つはいずれもお店の棚に並べて売る商品としての利点です。箱に詰めて宅配便でお届けする商品としては、同じ造りが重荷になります。当店は通販の問屋ですので、そこが合いませんでした。

同じ重さでも、容積が何倍にもなります

問題は、その袋を運ぶときに起きます。

1kgのかつお節は、厚削りなら小さな袋に収まります。ところが薄削りにして窒素を詰めると、同じ1kgでも箱の中で何倍もの場所を取ります。重さは変わらないのに、容積だけが膨らむのです。

しかも、この膨らみは減らせません。袋の空気を抜けば花が壊れるからです。かさばるのは造りの都合ではなく、薄削りという商品の性質そのものだ、ということになります。

宅配便の運賃は、重さだけで決まるわけではありません。荷物の大きさ(容積)でも決まります。 軽くてかさばる荷物は、重くて小さい荷物より運賃が高くつきます。

すると、こういうことになります。中身のかつお節の値打ちよりも、運賃のほうが目立ってしまう。 お客様にお見せする金額のうち、かなりの割合が「空気を運ぶ代金」になってしまいます。

これを、当店は納得していただける形だと思えませんでした。

だから、厚削りと粉に絞りました

当店が薄削りを置いていないのは、この一点に尽きます。 かつおだけではありません。さば、そうだ、いわし、どれも薄削りは扱っておりません。

厚削りは、削りが厚いぶん丈夫です。少々押されても砕けませんので、袋を膨らませる必要がありません。かつお粉やかつお節パウダーは、もとから細かいので壊れようがありません。どちらも袋がふくらまず、同じ箱でずっと多くお届けできます。運賃が中身の値打ちを超えることがありません。

かつお厚削りは、薄削りとは使い方が違います。薄削りが湯に入れてすぐ引き上げ、香りを取るものだとすれば、厚削りはじっくり煮出してだしの土台をつくるものです。ラーメンスープ、麺つゆ、そばつゆ、おでんの出汁。時間をかけて煮出す料理には、もともと厚削りのほうが向いています。

業務用で毎日だしを取られる厨房であれば、薄削りより厚削りのほうが理にかなっている場面は多いと思います。

当店は、冷凍で香りを守っています

もうひとつ、書いておきたいことがあります。

当店は、出荷する直前まで商品を冷凍で保管しています。 削った節も、粉も、煮干しも同じです。香りが飛びやすいものほど、低温で置いておくのがいちばん確実だからです。

そう考えると、常温の棚に長く置くことを前提にした造りを、当店はそもそも必要としていません。窒素を詰めて風味を保つ工夫は理にかなっていますが、冷凍で保管する当店のやり方とは、前提が違うのです。

どちらが良いという話ではありません。考え方の違いだとお受け取りください。

香りを短時間で立てたい方へ

とはいえ、「短い時間で香りを立てたい」という薄削りの用途そのものは、なくなりません。仕上げに香りを足したい、澄んだ一番だしを短時間で引きたい。そういう場面はあります。

その場合は、かつお粉やかつお節パウダーをご検討ください。

粉は表面積が大きいぶん、湯に入れてすぐに香りと味が出ます。薄削りに近い立ち上がりの早さがありながら、袋はふくらみません。かさばらずにお届けできる形で、短時間の香りが取れるということです。

原料の違いで、かつお粉、かつお粉 上、かつお節パウダーとご用意しております。粗さも味の方向も違いますので、くわしくはそれぞれのページをご覧ください。

まとめ

当店が花かつお(薄削り)を置いていないのは、味の問題ではありません。薄削りは脆くて、袋を膨らませないと花が壊れてしまう。そのぶんかさばり、運賃が中身の値打ちを超えてしまうからです。

そのぶん、厚削りと粉に絞っています。じっくり煮出すなら厚削り、短時間で香りを立てたいなら粉。どちらもかさばらずにお届けできます。

ご入り用のものが決まらないときは、お気軽にお尋ねください。私どもは調理の専門家ではありませんので、味づくりの指南はいたしません。そのかわり、どの商品がどんな原料でどう作られているか、在庫と入荷の見込み、規格については、いつでもお答えできます。

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