煮干しの袋の裏を見ると、原材料欄はたいていこう書いてあります。
「かたくちいわし、塩」
魚のあとに、塩。この塩は、味付けのために後から振ったものではありません。作るときに使ったものです。
この記事では、煮干しに塩が入る理由と、塩を使わずに作った煮干しのことを書きます。煮干しいわしの一覧の商品ページで、原材料欄を見比べながらお読みいただくと分かりやすいかと思います。
煮干しは、茹でてから干します
煮干しの作り方は、名前のとおりです。獲れた魚を煮て、干す。
このとき、真水ではなく塩水で炊くのが産地の常です。海のそばで作るものですので、海水を使うところもあります。
ですので、できあがった煮干しには塩気があります。原材料欄に「塩」と書いてあるのは、この工程を通ったという印です。煮干しいわし(長崎) 上も、煮干しいわし(瀬戸内) 特上も、原材料欄は「かたくちいわし、塩」です。
塩を使わない煮干しがあります
当店に一つだけ、塩を使わない煮干しがあります。無塩煮干しいわし(大分)です。
当店では、こうお伝えしています。
塩や海水を使わず真水で炊き上げた煮干しいわしです。
原材料欄も違います。「かたくちいわし」の一語だけで、塩がありません。魚は同じカタクチイワシですので、違うのは炊くときの水だけ、ということになります。
産地は大分県、加工地も大分県です。白タレで、身が柔らかく、だしの出が良い煮干しです。
後から塩気を決められます
塩を使わないことの利点は、はっきりしています。塩気を店の側で決められる、ということです。
塩水で炊いた煮干しは、だしを引いた時点で、すでにいくらか塩気が入っています。そこから味を作っていくことになります。もとの塩気がどれくらいかは、産地や作り手によって幅があります。
無塩のものは、その分がありません。だしそのものに塩気がありませんので、あとから足す量だけで決まります。
味を細かく決めておられる店、仕込みの再現性を大事にされている店では、この差が効いてくるかと思います。
ただし、塩気がゼロという意味ではありません
ここは、誤解のないように書いておきます。
「無塩」というのは、作るときに塩を加えていない、という意味です。魚そのものに元から含まれているものまで無くなるわけではありません。栄養成分表示の食塩相当量も、0と表示されているわけではありません。
表示の言葉は、それぞれ決まった意味を持っています。「無塩」は原材料に塩を使っていないこと。「食塩相当量」は、できあがったものに含まれるナトリウムを食塩の量に換算した数字。この二つは別のことを言っています。
原材料欄と栄養成分表示の読み方は袋の裏の読み方|原材料欄と産地欄が教えてくれることにまとめました。
大分の白タレという性格
この煮干しは、白タレに分類されます。白タレというのは、干し上がりが白っぽく、身の柔らかいカタクチイワシの煮干しのことです。身が柔らかいので出汁の出がよく、苦味がなく、とても上品なダシが取れます。
青口と呼ばれる、干し上がりが青い煮干しとは性格が違います。青口は力強く出ますが、白タレは苦味が少なく、澄んだだしになります。呼び名の整理は煮干しの名前の読み方にまとめました。
産地としての大分の性格については業務用煮干しの産地の違いに書いています。産地が違えば、炊き方も干し方も変わります。塩を使うか使わないかも、産地の習わしに関わる話です。
だしを取るときに気をつけること
塩の有無にかかわらず、煮干しのだしには共通の注意があります。当店では、こうお伝えしています。
煮干しを水につけている時間は1から2時間ほどが目安です。長く水につけておきますと臭みが出ますのでご注意ください。冷蔵庫で取る場合は一晩を目安にしてください。
浸けておけば濃くなる、というものではありません。長く置きすぎると、旨味ではないものが出てきます。
頭と腹を取ってお使いいただくと、苦味の少ない、より澄んだだしになります。手間はかかりますが、仕上がりが変わります。
向かないこと
良いところと同じ重さで書きます。
商品ページにも、はっきり書いています。
塩気がないことをご了承のうえお買い求めください。
そのままかじる使い方には向きません。塩気があるからこその味わいというものがあります。だしを取るための煮干しとお考えください。
もう一つ、量の問題があります。当店では7.5kgの箱でのご用意です。少量から試したい場合には向きません。
節は、原材料欄の書き方が違います
節も乾物ですが、原材料欄の書き方が煮干しとは違います。
かつお厚削りの原材料欄は「かつおのふし」です。魚の名前ではなく、節の名前が書いてあります。節は、いったん煮干しにしたものを燻して干し上げて作りますので、一段さかのぼって「ふし」と書く決まりになっています。
ですので、節の袋の裏を見ても、元の煮干しを作るときに塩を使ったかどうかまでは分かりません。そこは煮干しの段階の話で、節の原材料欄には出てこないためです。
節の作り方についてはかつお節以外の節のことに書きました。
焼きあごにも、塩は入りません
もう一つ、塩の入らないものがあります。焼きあごです。
あごは飛魚のことです。焼きあごは、茹でずに、串や針金を通して炭火で焼き上げて作ります。茹でる工程がありませんので、塩水を使う場面そのものがありません。
同じ「あご」でも、茹でて干したあご煮干しのほうには塩が入ります。作り方が違うと、原材料欄も変わります。
なぜ、あまり見かけないのか
無塩の煮干しは、市場にあまり出回りません。当店では、こうお伝えしています。
産地で消費されることが多いため市場に出回ることが少ない珍しい煮干しです。
塩を使わないぶん、日持ちの面で気を遣います。産地の近くで消費されるほうが自然、という事情があります。
当店ではこうした数のまとまらないものをレア煮干し、珍しい煮干しとしてまとめています。入荷が読めないものが多く、途切れることもあります。
保管のこと
賞味期限は冷蔵で半年です。この煮干しにも酸化防止剤を使っていません。当店では出荷の直前まで冷凍で保管しています。
塩には保存を助ける働きもありますので、無塩のものは、そのぶん温度に気を配っていただくほうが安心です。乾物の保管の考え方は乾物なのに、冷凍で保管していますにまとめています。
まとめ
| 商品 | 作り方 | 原材料欄 |
|---|---|---|
| 煮干し(通常) | 塩水や海水で炊いて干す | かたくちいわし、塩 |
| 無塩煮干し | 真水で炊いて干す | かたくちいわし |
| 節 | 煮干しにしてから燻して干す | かつおのふし など、節の名前で書く |
| 焼きあご | 茹でずに炭火で焼く | とびうお |
商品は煮干しいわしの一覧とレア煮干し、珍しい煮干しの一覧からご覧いただけます。粉にしたものは魚粉・煮干し粉・パウダーの一覧にまとめています。





