煮干しを仕入れようとして商品名を眺めると、見慣れない言葉が並んでいます。
平子。タレ。白タレ。銀タレ。青口。白口。かえり。大羽。上。特上。混じり。
どれも産地や市場で長く使われてきた言葉で、袋にも伝票にもそのまま載ります。ただ、意味を書いた紙は付いてきません。この記事では、当店で扱っている煮干しを例に、これらの言葉が何を指しているのかを整理します。煮干しいわしの一覧を開きながらお読みいただくと、名前と実物の対応が見えやすいかと思います。
まず、魚が三種類あります
煮干しになるいわしは、大きく三種類です。名前が違っても、元をたどればこの三つのどれかです。
見分けるのに、いちばん確かなのは原材料欄です。商品名は産地の呼び方に引きずられますが、原材料欄は魚の名前で書く決まりになっています。
| 原材料欄の書き方 | 産地での呼び名 | 当店の商品の例 |
|---|---|---|
| かたくちいわし | タレ、背黒、青口、白口 | 煮干しいわし各種 |
| まいわし | 平子 | 平子煮干し各種 |
| うるめいわし | うるめ | うるめいわし煮干し各種 |
たとえば平子煮干し 中の原材料欄は「まいわし、塩」です。平子はまいわしの若い魚を指す呼び名で、商品名には平子と書き、原材料欄にはまいわしと書きます。二つの言葉が同じものを指しています。
同じように、煮干しいわし(長崎) 上の原材料欄は「かたくちいわし、塩」です。商品名にカタクチとは書いていませんが、中身はカタクチイワシです。
「タレ」はカタクチイワシのことです
当店の商品名に出てくる「タレ」は、カタクチイワシの煮干しを指しています。
それがはっきり分かるのがうるめ煮干し(平子・タレ混:長崎)です。商品名は「平子・タレ混」ですが、中身の説明には「うるめ煮干し5割、平子煮干し4割、煮干しいわし1割くらいの割合」とあり、原材料欄は「うるめいわし、まいわし、かたくちいわし、塩」です。うるめ、平子、タレの三つが、そのままうるめいわし、まいわし、かたくちいわしに対応しています。
産地によって呼び方に幅がありますので、他所で違う使われ方をしていることはあります。当店の商品については、この対応でご覧いただけます。
「白タレ」「銀タレ」「青口(背黒)」「白口」は、見た目の話です
同じカタクチイワシでも、獲れた場所や時期によって、干し上がりの色が変わります。その色の違いを言い分けたのが、白タレ、銀タレ、青口、白口といった言葉です。
煮干しいわし(長崎) 白タレの商品ページには、「白タレは通常の青口の煮干しと違い身が柔らかいのが特徴です。出汁の出がよく関西ではよく好んで使われます」とあります。
煮干しいわし(瀬戸内) 特上のほうは「瀬戸内で生産された白口のカタクチイワシの煮干し」で、「出汁は青口のような力強さはないですが、苦味がなくとても上品なダシが取れます」と書いています。こちらの商品ページでは、同じ煮干しを銀タレとも白タレとも呼んでいます。
青口は、背黒とも呼ばれます。同じものを指す二つの言い方です。背中が青黒く見えるところから来た呼び名で、どちらの言葉も産地や取引先によって使い分けられています。
つまり白いほうは身が柔らかく、だしが上品に出る。青いほう、つまり背黒は力強い。だいたいそういう分かれ方です。
言葉の細かい線引きは、産地によっても、話す人によっても揺れます。ですので、名前で決めきらずに、商品ページの説明のほうをご覧いただくのが確かです。
地域によって好みが分かれる話は「背黒」と「白タレ」|煮干しの好みが地域で分かれる話に書きました。
大きさの言葉|大羽、中、小、かえり
煮干しは、大きさで呼び分けます。同じ魚でも、大きさが違えばだしの出方も値段も変わるためです。
| 呼び名 | おおよその大きさ | 性格 |
|---|---|---|
| 大羽 | 約10から12cm | 脂がのっている。生産そのものが少ない |
| 中 | 約12から16cm(平子の場合) | 幅広い用途に使いやすい |
| 小 | 魚種による | 苦味が出にくい |
| かえり | 小さい | 混じっていると値が下がる |
大きさの目安は魚種によって違いますので、同じ「中」でも平子とカタクチでは寸法が変わります。平子煮干し 中は約12から16cm、煮干しいわし(牛深) 大羽は約10から12cmです。数字は必ず規格表でお確かめください。
そして、この「大羽」「中」「小」という線引きも、当店が決めている基準です。業界で決められた物差しがあるわけではありません。
「かえり」は、小さな煮干しのことです。煮干しいわし(長崎) 白タレの商品ページには「かえり(小さな煮干し)が混ざっております」とあり、値が下がる理由として書いています。だしを取るぶんには差し支えありませんが、姿を揃えたい用途では困ります。
等級の言葉|上、特上
「上」「特上」は、姿形の良さで付けられています。味の順位ではありません。
そして、この等級も当店が決めている基準です。業界で決められた規格があるわけではありませんので、よそ様の「上」と当店の「上」が同じ基準とは限りません。
煮干しいわし(瀬戸内) 特上は、真っ直ぐで姿形がよく、選別すれば贈答用にも使える姿形です。まっすぐで、折れがなく、皮が剥がれていない。そういう見た目の良さが等級になります。
だしを取ってしまえば、姿の良し悪しは器に出ません。ですので、袋詰めして小売に回す用途や、そのまま食卓に出す用途では等級が効きますが、煮出してしまう用途では、等級より産地や脂の量のほうが効いてきます。
煮干しいわし(長崎) 上のように、産地名と等級が並んでいる商品名もあります。この場合は「長崎産の、姿形の良いもの」という意味になります。
「混じり」は、選別していないという意味です
商品名に「混じり」「混」と入っているものがあります。平子・タレ混、うるめ混、キビナゴ混じり、いわし混じり。
これは、魚が二種類以上まざったまま製造されているという意味です。よそから足したのではなく、獲れたときからまざっています。
うるめ煮干し(平子・タレ混:長崎)は、うるめ煮干し5割、平子煮干し4割、煮干しいわし1割くらいの割合で混獲され、一緒に製造された煮干しです。網に一緒に入ってきたものを、分けずにそのまま炊いた、ということです。
分けないぶん、手間がかかっていません。ですので値が下がります。ただ、だしの側から見ると話が逆になります。この煮干しについては、こうもお伝えしています。
煮干しは色々な種類の魚を同時に炊くことによって旨味が増します。カタクチだけの煮干しより複雑な味のだしとなり、むしろメリットが多いです。
市場では等級が下がるけれど、だしとしては良い。この逆転が、混じりの煮干しが訳あり特価で出てくる理由です。産地ごとの性格の違いについてはうるめ煮干し、平子煮干しの一覧もあわせてご覧ください。
気をつけていただきたいこと
混じりの煮干しは、原料箱のままお出しするものがあります。そういう商品には、他の煮干しや、エビ・カニが混ざっている可能性があります。商品ページにもその旨を書いていますので、アレルギーへの対応が必要な現場では、あらかじめご確認ください。
色についても一言。混じりの煮干しは少し黄色く見えることがあります。うるめ煮干し(平子・タレ混:長崎)も、色は少し黄色いのですが、味に差し支えはありません。姿を見せる使い方でなければ問題ありません。
名前だけでは分からないこと
ここまで整理してきて言うのも妙ですが、名前で分かることには限りがあります。
産地が同じで、等級が同じで、大きさも同じでも、その年の海の様子で中身は変わります。脂の乗り方が変われば、だしの出方も変わります。
当社の会社案内には、こう書いています。
煮干しは見た目だけでは味が判断できません。姿が良くても、油臭くてまずい煮干しはたくさんあります。そのため当社では、取り扱うすべての商品について、店長が実際にサンプルを取り寄せ、香りと味を自分で確かめてから仕入れています。
名前は、探すための手がかりです。手がかりをたどった先で、実物がどうだったか。そこは人が確かめるほかありません。
まとめ
| 言葉 | 指しているもの |
|---|---|
| タレ、背黒、青口、白口 | カタクチイワシ(原材料欄は「かたくちいわし」) |
| 平子 | まいわし(原材料欄は「まいわし」) |
| うるめ | うるめいわし |
| 白タレ、銀タレ | 干し上がりが白い、身の柔らかいもの |
| 青口 | 干し上がりが青いもの。力強いだし |
| 大羽、中、小 | 大きさ。目安は魚種で違う |
| かえり | 小さな煮干し |
| 上、特上 | 姿形の良さ。味の順位ではない |
| 混じり、混 | 二種類以上がまざったまま製造されたもの |
商品は煮干しいわしの一覧とうるめ煮干し、平子煮干しの一覧からご覧いただけます。レア煮干し、珍しい煮干しの一覧には、いわし以外の魚で作った煮干しを並べています。
粉にしたものをお探しでしたら魚粉・煮干し粉・パウダーの一覧をご覧ください。






