だしには昆布だし、かつおだし、煮干しだし、合わせだしなど種類があり、それぞれ香りや旨みの性質が異なります。ラーメン店、うどん・そば店、給食施設、仕出しなど、メニューごとにだしを使い分ける業務用の現場では、素材の性格を知っておくことが仕込みの土台になります。
なお、当店は乾物の問屋であって、調理のプロではありません。ですのでレシピや味づくりの指南はいたしません。ここに書くのは、どの素材が、どういう料理に、実際によく使われているかという事実だけです。
だしの素材は、大きく4つに分かれます
- 魚 … かつお節、さば節、宗田節、マグロ節、煮干し、あご(トビウオ)
- 海藻 … 昆布
- きのこ … 干ししいたけ
- エビ・貝 … 干しエビ、あさり煮干し、干し貝柱
どれも「乾かして旨みを凝縮させたもの」という点は共通しています。違うのは、旨みの出方と香りの立ち方です。
みそ汁に使われるだし
みそ汁には、煮干しだしや合わせだしがよく使われています。煮干しの魚介の風味は、みそと合わせたときにしっかり残るためです。
このとき粉末をそのままお使いになる現場も多くあります。味噌汁のように粉が入ったままでも差し支えのない料理では、濾さずにお使いいただけるためです。当店の粉末は原料を粉砕しただけですので水には溶けず、粉は残りますが、気にされないならそのままで結構です。
うどん・そばつゆに使われるだし
つゆには、かつお厚削りのほか、宗田節・さば節がよく使われています。じっくり煮出して土台をつくる用途ですので、薄削りではなく厚削りや節を折ったものが向きます。
宗田節については、ひとつ正直に書いておきます。削り節・パウダー用の脂が少ないものは手に入るのですが、当店好みの、脂があって美味しい宗田節は滅多に手に入らないレアなものです。入荷したときにはお知らせしています。
煮物に使われるだし
煮物には、昆布だしや、昆布とかつお節の合わせだしが使われています。野菜の煮物には昆布だけであっさりと仕上げる現場も多くあります。
昆布は産地の名前がそのまま商品名になっているのが特徴です。利尻昆布は、礼文島・利尻島産が「島もの」と呼ばれ、宗谷産は比較的求めやすくなっていますが、これは入るタイミングの違いによるもので、品質はそれほど変わりません。だし昆布(中国産)は表面の汚れが国産より多く、塩分も多いので、洗い流してお使いください。
鍋料理に使われるだし
鍋には、あごだしや昆布だしのようにクセの少ないだしがよく使われています。あごだしはトビウオ特有の少し甘みがあるだしが特徴です。
ここで押さえておきたいのが、「あご煮干し」と「焼きあご」はまったく別のものだということです。製法が違います。
あご煮干しはトビウオを煮干しにしたもので、マイルドでクセが少なく使いやすい素材です。焼きあごは生のトビウオを炭火でじっくり焼いてから乾燥させたもので、炭火焼き独特の香りがあり、クセは少し強めですが、その香ばしさがメリットになります。当店では長崎平戸産をメインに扱っています。
焼きあごは、はらわたを取り除いてあり、頭を重点的に炭火で焼いて臭みを抜いてありますので、下処理をせずにそのままお使いいただけます。気になる方は頭を取っていただいても構いません。
ラーメンスープに使われるだし
ラーメンスープは、煮干しと厚削りの組み合わせが多く見られます。厚削りは当店で3種類あります。
- かつお厚削り … かつお節の荒節をそのまま厚削りにしたオーソドックスなもの
- 鰹枯節厚削り … 枯節(カビを付けて寝かせ、熟成させたかつお節)を厚削りにしたもの。酸味が取れて、かつお厚削りと比べると段違いに美味しくなります。ただし生産工程が複雑です
- マグロ節厚削り … マグロ節を厚削りにしたもの。原料はメジマグロとキハダマグロです
ラーメンスープも、粉が入ったままで差し支えのない料理ですので、粉末をお使いになる現場が多くあります。
煮干しは、サイズと産地で性格が変わります
小さな煮干しは頭を取らなくてもエグミが出にくく、大きな煮干しは逆に頭とはらわたを取ったほうが良いだしが取れます。大きいものほど味が強く、小さいものほど上品な味、という捉え方です。
産地によっても違います。長崎産は煮干し市場に出して競りにかけられるため、見た目を重視して煮込みが弱い傾向があります。牛深産は基本的に市場を通さず、炊きが強く、見た目は悪くなりがちですが、炊き時間が長いぶん味は強く出ます。大分産は瀬戸内と似ていて白タレが作られ、外海に近いぶん脂のノリが少ないことが多い産地です。氷見産はすっと痩せ型で、値は張りますが味は美味しくおすすめです。瀬戸内産は脂が乗りやすく、当店では秋以降の脂が抜けた時期のものを仕入れています。
なお「白タレ」と「背黒」は対になる言葉です。白タレは見た目が白く皮が弱い感じのカタクチイワシの煮干し、背黒は青々としてかっちりしたもの。どちらが良いということはなく、お好みです。
地域によって、好まれる素材が違います
これは当店が全国のお客様とお取引をするなかで、はっきりと感じていることです。
関西では、瀬戸内産の白タレのほか、うるめ節やいわし節も好まれています。いっぽう長崎産の煮干しは、関東でお使いになるお客様が多くなっています。
大きなサイズのカタクチイワシが好まれる地域、うるめ煮干しが好まれる地域、キビナゴ煮干しをあまりお使いにならない地域と、伝統的な棲み分けがいまも残っています。新しくお店を出される地域がいつもと違う場合は、その土地で何が好まれているかを一度確かめてみる価値があります。
節は、削るのではなく折って使います
当店が扱う節は、脂が多く柔らかめのものを仕入れています。柔らかいので手やハンマーで折りやすく、だしも出やすいためです。脂があるので燻製と相性が良く、とても美味しくなります。
いっぽう乾燥が良くて脂が少ない節は、削り節やパウダー用に使われます。脂があると削り節やパウダーにはできないからです。旨味は、当店が扱う脂がある節のほうが断然上です。
ですので「節はご自身で削って使うタイプ」という一般的な説明は、当店の商品には当てはまりません。
時間がないときの選択肢
仕込みに時間が取れない場合は、粉末や混合だしという形もあります。
あごだし混合だしとかつお椎茸昆布だしは、小骨を網で振るって取り除いてあります。そのため漉す手間を減らしてお使いいただけます。ただし小骨が完全にゼロになるわけではありません。天然のだしですので、口に残る感じがありますし、汁も濁ります。
だし袋に入れず粉のままバラで袋詰めしているのは、「だしパックは中身が見えないので心配」という声にお応えするためです。袋を開ければ、何が入っているかを目で見て確かめていただけます。
まとめ
料理によって使われる素材には、たしかに傾向があります。ただ、そのうえで効いてくるのは素材そのものの性格です。同じ「煮干し」でもサイズと産地で変わり、同じ「かつお節」でも荒節と枯節で変わります。
どの素材をどう組み合わせるかは、お店ごとの味づくりのお話です。そこは当店から申し上げることではありません。素材についてお知りになりたいことがありましたら、お気軽にお問い合わせください。
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