ラーメンのスープ、うどんやそばのつゆ、おでんの下地。寸胴いっぱいの昆布だしを毎日取っていらっしゃる方から、ときどきご質問をいただきます。「水から入れるのか、沸いてから入れるのか」「一晩浸けるほうがよいのか」。当店は業務用の乾物を扱う問屋ですので、料理の先生のような教え方はできません。ただ、袋の裏に書いてあることと、お客様が実際にどうお使いになっているかは、毎日見ております。ここでは、その範囲でお答えできることを書きます。

先に、いちばん大事なことを
昆布だしの取り方に、当店として「これが正解です」と決めているやり方はありません。
お店によって、取る量も、火の入れ方も、仕上げたい味も違います。ラーメンのスープに使う昆布だしと、お吸い物に使う昆布だしでは、求められるものがそもそも別です。ですので、これから書く時間や分量は、広く知られている一般的な目安としてお読みください。そのうえで、お店の味に合うところまで加減していただくのが、いちばん確かです。
そのかわり、当店の昆布そのものについては、袋の裏に書いてあることをそのまま書きます。 産地、原材料、賞味期限、そして種類ごとの性格の違いです。ここは想像で書いていません。
昆布だしの取り方は、大きく二つに分かれます
やり方はお店の数だけありますが、大きく分けると次の二つです。
- 水出し 水に浸けたまま置いておき、時間をかけて旨味を引き出す
- 火入れ 水から火にかけ、沸きあがる前に昆布を引き上げる
両方を組み合わせる方もいらっしゃいます。前の晩に水出ししておいて、翌朝それを火にかけ、沸く手前で昆布を取り出す。この形がいちばん多いように思います。
水出し ― 前の晩に仕込む取り方
水に昆布を入れて、そのまま置いておくだけの取り方です。一般的には、冷蔵庫で一晩(おおよそ8時間から10時間ほど)と言われています。
この取り方の良いところは、火加減を見ている人が要らないことです。閉店前に仕込んで冷蔵庫に入れておけば、翌朝には出来ています。厨房の手が空かない時間帯に、だしのために人を置かなくて済みます。
気をつけたいのは、常温で長く置かないことです。夏場に厨房へ出したまま一晩置くと、だしそのものが傷むことがあります。冷蔵庫に入るだけの容器に分けて仕込まれる方が多いのは、このためです。
火入れ ― 沸かしきらない、という一点
水から火にかける取り方です。一般的には、沸騰させないことが言われます。沸いてくる手前、鍋のふちに小さな泡が上がりはじめたあたりで昆布を引き上げる、という書かれ方をよく見かけます。
沸かし続けると、昆布からぬめりが出て、汁が濁りやすくなります。えぐみが出ることもあります。ただし、これも料理によります。 ラーメンのスープのように、他の材料と一緒に長く炊く作り方をされているお店もありますし、それで美味しく仕上がっているのであれば、それが正解です。
当店としてお伝えできるのは、「澄んだ汁に仕上げたい場合は、沸かしきらないほうが扱いやすい」というところまでです。
水に対して、どれくらい入れるか
一般には、水1リットルに対して昆布10gから20gほどという書かれ方をよく見ます。1%から2%です。20リットルの寸胴なら200gから400g、ということになります。
ただ、業務用でお使いの方は、これよりも濃く取っていらっしゃることが多いように思います。かつお節や煮干しと合わせる前提で、昆布だしを土台として濃いめに取っておく、という作り方です。
ここは、お店の味の話です。 一般的な量から始めて、薄ければ増やす、強すぎれば減らす。その加減だけは、実際に取ってみないと分かりません。当店が決めることではないと考えております。
昆布は、切って使われることが大半です
当店の真昆布 1kgは、90cmの長切昆布を半分に切った長さ約45cmでお届けしています。
これは、45cmで使ってくださいという意味ではありません。90cmのままだと保管しづらいので、半分にしてあるだけです。 実際には、お店でさらに切って、鍋に入る大きさにして使われることがほとんどです。
切ったところから旨味が出やすくなる、という言い方もされます。細かく切るほど出やすくはなりますが、そのぶん引き上げるときに散らばって手間が増えます。鍋に収まって、取り出しやすい大きさ。 それがいちばんの目安になるかと思います。
昆布によって、出るだしが違います
ひとくちに昆布と申しましても、当店が扱っているものだけで何種類もあります。袋の裏の表示と、お客様からうかがっているお話をもとに、性格の違いを並べます。
| 昆布 | 産地 | だしの性格 |
|---|---|---|
| 真昆布 | 北海道 | くせのない上品な甘み。香りがよい |
| だし昆布(中国産) | 中国 | 厚みは国産の上物より薄いが、だしの出は良い |
| だし昆布(韓国産) | 韓国 | 中国産に比べると塩気がやや控えめ |
| 根昆布 | 北海道南部 | 塩気が弱く甘みがある。とろみが出やすい |
| 羅臼昆布 | 北海道羅臼 | 濃いだしが出る、上物として知られる昆布 |
| 利尻昆布 | 北海道利尻 | 澄んだだしが出る、上物として知られる昆布 |
このうちだし昆布(中国産)は、一般にはあまり知られていない昆布ですが、業務用の世界では費用対効果の高さで知られています。厚みは日本の上物にはかないません。 そこは正直に書いておきます。ただ、だしの出は良く、ラーメン店・和食店・ホテル・旅館で長くお使いいただいています。
根昆布は、昆布の根に近い部分です。頭昆布(かしらこんぶ)とも呼ばれます。旨味が多く出ますが、硬いので水に十分に浸してからでないとだしが出にくく、少しとろみが出やすいという性質があります。澄んだ汁に仕上げたい場面では、この点だけご承知おきください。
産地ごとの違いや等級の見方は、別の記事に詳しく書いてあります。
白い粉は、拭かずにそのままで構いません
昆布の表面に白い粉が吹いていることがあります。カビではないかとご心配なさる方がいらっしゃいますが、これは旨味の成分です。 当店の商品ページにも、同じことを書いてあります。
昆布に白い粉が出ている場合がありますが、旨味成分ですので問題ありません。
ですので、固く絞った布巾で丁寧に拭き取ってしまうと、せっかくの旨味を落とすことになります。砂などの汚れが気になるときに、さっと払う程度で十分かと思います。
一番だしのあと ― だしがらのこと
引き上げた昆布に、旨味がまったく残っていないわけではありません。もう一度水を張って弱火にかければ、二番だしが取れます。一番だしより薄くなりますので、煮物の下地や、味の濃い料理の割り水にという使われ方が一般的です。
刻んで佃煮にされるお店もあります。ここは、それぞれのお店のやりくりの話です。当店から「こうしてください」と申し上げることではありません。
昆布だしだけでは足りない、と感じたら
昆布のだしは、澄んだ甘みが持ち味です。そのぶん、それだけで組み立てると、味の芯が細く感じられることがあります。日本の料理で昆布とかつお節、あるいは昆布と煮干しを合わせることが多いのは、このためです。
合わせるときの比率については、別の記事にまとめてあります。
合わせる相手としては、かつお厚削り、煮干しいわし、焼きあごあたりがよく使われています。
時間がないときは、昆布粉末という手もあります
だしを取る時間そのものが取れない、という厨房もあります。その場合は、昆布粉末という選び方があります。
粉ですので、浸けておく時間も、引き上げる手間も要りません。汁に溶かしてそのまま使えます。かわりに、昆布そのものが汁の中に残りますので、澄んだ汁に仕上げたい料理には向きません。 濁ってよいスープや、味を濃く出したい料理向けです。
なお、粒の大きい2mm粒の昆布粉末も扱ってまいりましたが、こちらは製造工場の都合により終売となります。いまお使いの方は、粉末(パウダー)への切り替えをご検討ください。粒の大きさが違いますので、同じ量でも出方が変わります。少量で試してから量を決めていただくのが安心です。
保管は、冷暗所で半年
当店の昆布は、いずれも賞味期限が冷暗所で半年、保管方法は高温多湿を避けて冷暗所と表示しています。
乾物ですので日持ちはしますが、湿気を吸うと風味が落ちます。開けた袋の口をきちんと閉じ、床に直置きせず、火の近くを避けていただくだけでも、持ちが変わります。乾物全般の保管については、こちらに詳しく書いてあります。
まとめ ― 決めつけずに、加減してください
ここまで書いてまいりましたが、昆布だしの取り方に、一つの正解はありません。 水出しか火入れか、何グラム入れるか、何分置くか。どれもお店の味に合わせて動かしてよいところです。
当店がはっきり申し上げられるのは、次のことだけです。
- 昆布の種類によって、出るだしの性格が違うこと
- 白い粉は旨味であって、拭き取る必要はないこと
- 根昆布は硬く、とろみが出やすいこと
- 賞味期限は冷暗所で半年、湿気を避けること
あとは、実際に取ってみて、お店の味に合うところを探していただくのがいちばんです。味づくりのご提案までは、当店からはいたしません。そのかわり、産地・厚み・等級・値段は、どれも商品ページに並べてあります。見比べていただけるようにしておくのが、私どもの仕事だと思っています。





