「干し貝柱は、何分くらい水に浸ければよいですか」
このお尋ねを、ときどきいただきます。干し貝柱も干しエビも、乾いた状態でお届けするものですので、当然のご質問だと思います。
ただ、当店からは「何分」という数字をお出しできません。 そのかわり、お伝えできることがいくつかあります。この記事では、数字を出せない理由と、それでもお伝えできる大事なことを書いていきます。
時間の目安は、お出しできません
まず、正直なところから書きます。
当店の商品ページには、戻し時間を書いていません。 干し貝柱の規格表に書いてあるのは「だし・スープ取り用としてお使いください」までです。書いていないのではなく、一律の数字を出しようがないというのが実際のところです。
理由は、粒の大きさが商品によって違うからです。当店が扱っている干し貝柱を並べてみます。
| 商品 | 大きさ | 原材料 |
|---|---|---|
| 干し貝柱(イタヤ貝) 1kg | 1kgあたり500から700粒。外径8mm前後 | イタヤ貝、塩 |
| 干し貝柱 3S(1等:北海道) 500g | 小粒サイズ | ホタテ貝、塩 |
同じ「干し貝柱」でも、粒の大きさがまるで違います。小さい粒と大きい粒では、水の入りかたが違います。 8mm前後の粒と、それより大きな粒に、同じ時間を当てはめることはできません。
さらに、乾き具合もロットによって少しずつ変わります。天然のものですので、そこは揃いません。
当てはまらない物差しの数字を、無理にひねり出すことはしたくないと考えています。 粉の細かさについて「何メッシュですか」とお尋ねいただいたときも、当店は同じお答えをしています。
そのかわり、冷蔵庫での水出しをおすすめします
時間は出せませんが、置く場所については、はっきりお伝えできることがあります。
常温ではなく、冷蔵庫で水に浸けてください。
理由は傷みやすさです。干し貝柱も干しエビも、水を含むと生の食材に近い状態に戻ります。乾いているあいだは日持ちしますが、水を含んだ瞬間から事情が変わります。常温に長く置くと傷みやすくなります。
冷蔵庫の中であれば、ゆっくり戻していただいても心配が少なくて済みます。時間をかけて戻すほうが、身が締まったまま均一に戻るという面もあります。急ぐ必要がなければ、冷蔵庫でひと晩というのが落ち着くところだと思います。
同じ考え方は煮干しのだしでも同じで、当店でも「冷蔵庫で取る場合、一晩を目安にしてください」とお伝えしています。
だしを取るだけなら、戻さなくても構いません
ここも、はっきり書いておきたいところです。
だしを取るためだけにお使いになるなら、戻す工程は必ずしも要りません。 当店の干し貝柱の規格表は、次のとおりです。
だし・スープ取り用としてお使いください
乾いたまま水から入れて、火にかけていただければ、だしは出ます。「戻してから使うもの」と決まっているわけではありません。
戻す工程が要るのは、貝柱そのものを具として使いたいときです。戻すと身がほぐれて、料理の中で形として見えるようになります。だしだけが目的であれば、そこまでする必要はありません。
当店の干し貝柱(イタヤ貝)は身が柔らかいので、調理用途にもお使いいただけます。この場合は戻したほうが扱いやすくなると思います。
戻し汁は、捨てないでください
戻す場合に、ひとつだけお願いがあります。
貝柱を浸けていた水には、旨みが出ています。 これを捨ててしまうのは、もったいない話です。そのままだしとしてお使いいただけます。
浸けていた水と貝柱を、まとめて鍋に入れていただくのがいちばん簡単です。だしを取ったあとの貝柱は取り出せますので、具としても使えます。
干しエビも同じです。エビ・カニ素材の選び方にも書きましたが、形のあるエビを選ぶ理由のひとつが、この戻し汁です。
干しエビは、種類によって使い方が違います
「干しエビ」とひとくくりに呼ばれますが、当店の商品ページを見ると、使い方の書かれ方が違います。
| 商品 | 商品ページの使用方法 | 産地 |
|---|---|---|
| 干し小エビ(ベトナム) 5kg | 加熱加工用(ラーメンのスープ、天麩羅の衣の風味付け、もんじゃ焼き、お好み焼き、焼きそば、せんべい・蒲鉾の具材等) | ベトナム |
| 干しむきエビ 1kg | そのままお召し上がりいただけます | 中国 |
| 干しむきエビ 上 1kg | そのままお召し上がりいただけます | インドネシア |
| 干し桜えび(台湾) 500g | そのままお召し上がりいただけます | 台湾 |
干し小エビは、加熱してお使いいただくものです。 スープに入れる、衣に混ぜる、生地に混ぜる。そういう使い方を前提にした商品です。
干しむきエビと桜えびは、そのままでも召し上がれます。 ですので「戻さないと使えない」ということはありません。水で戻して具材にすることもできますが、必須の工程ではありません。
エビの呼び名については「シャーミー」「アキアミ」|干しエビの呼び方を整理しますにまとめています。呼び方が違うだけで同じものを指していることが多く、探しにくい商材です。
塩味が出るものがあります
戻し汁をだしにお使いになる場合、これはぜひ知っておいていただきたいところです。
原材料欄を見ていただくと分かります。
| 商品 | 原材料 | 塩 |
|---|---|---|
| 干し貝柱(イタヤ貝) | イタヤ貝、塩 | 入ります |
| 干し貝柱 3S(北海道) | ホタテ貝、塩 | 入ります |
| 干しむきエビ | ピンクエビ、塩 | 入ります |
| 干し小エビ(ベトナム) | アキアミエビ | 入りません |
| 干し桜えび(台湾) | 桜えび | 入りません |
塩が入っているものは、戻し汁にも塩味が出ます。 だしとしてお使いになるときは、その分を見込んで味を決めていただくほうが確かです。
これは「塩辛い」という意味ではありません。ただ、塩が入っていない前提で味を組み立てると、あとから塩が強く感じられることがあります。原材料欄を先に見ていただくのが、いちばん確かです。
粒の大きさで、戻りかたが変わります
戻す時間を決めるのは、結局のところ粒の大きさです。
当店の干し貝柱(イタヤ貝)は、1kgあたり500から700粒。外径は8mm前後です。粒が小さいぶん、戻りは早いほうになります。
いっぽう、大きな粒の干し貝柱は時間がかかります。同じ時間を当てはめると、小さいほうは戻りすぎ、大きいほうは芯が残る、ということが起こります。
イタヤ貝とホタテの違い、粒の数で表す規格の読み方については、イタヤ貝とは|ホタテとの違いと、干し貝柱としての姿に詳しく書いています。
保管のしかた
乾物ですが、美味しさを保つために、当店では冷蔵での保管をおすすめしています。冷凍ができればそれがいちばんです。
当店の営業冷蔵庫では-25℃以下で保管し、出荷直前まで-15℃で置いています。干し貝柱も干しエビも、賞味期限は冷蔵で半年としています。
戻したあとのものは、乾物ではありません。 水を含んだ時点で日持ちしなくなりますので、戻したらその日のうちにお使いいただくのが安心です。使いきれる量だけ戻していただくのがよいと思います。
迷ったときに見る、三つの欄
結局のところ、どう扱うかを決める手がかりは、商品ページの三つの欄に書いてあります。
| 見る欄 | 分かること |
|---|---|
| ご使用方法 | 「だし・スープ取り用」なら戻さずに煮出せる。「加熱加工用」なら火を通して使う。「そのままお召し上がりいただけます」なら戻す必要がない |
| 原材料 | 「塩」が入っていれば、戻し汁に塩味が出る |
| サイズ(粒の数) | 粒が小さいほど戻りが早い |
当店は原料をお納めする問屋ですので、味づくりのご提案まではしておりません。そのかわり、上の三つはすべての商品ページに書き出しています。 産地と加工地も同じように並べてあります。見比べていただけるようにしておくのが、私どもの仕事だと思っています。
あわせてお読みください
- イタヤ貝とは|ホタテとの違いと、干し貝柱としての姿
- 「シャーミー」「アキアミ」|干しエビの呼び方を整理します
- エビ・カニ素材の選び方|頭・むき身・殻、どこを使うかで香りが変わります
- 貝のだし|あさり煮干し・殻付きあさり・干し貝柱・しじみ粉末の使い分け
- いりこだし・煮干しだしの取り方|水1Lに20gから、えぐみを出さない手順
- だしパック(出汁袋)の使い方|何を入れるか、どれくらい入れるか
- 袋の裏の読み方|原材料欄と産地欄が教えてくれること
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