「いりこ」と「煮干し」。どちらもよく聞く言葉ですが、いざ「何が違うのか」と尋ねられると、答えにくいところがあると思います。
先にお答えします。同じものです。呼び方が地方で分かれただけで、指しているものは変わりません。
当店は煮干しをお納めする問屋です。ここでは、なぜ二つの呼び方があるのか、そして袋の裏を見れば何が分かるのかを、当店が実際に扱っているものからご案内します。
いりこと煮干しは、同じものです
どちらも「小魚を茹でて、干したもの」を指します。作り方も、使い道も、同じです。
ちがうのは呼び名だけ。ですから「いりこだしと煮干しだし、どちらが美味しいか」という問いには、お答えのしようがありません。同じものでだしを取っているからです。
西では「いりこ」、東では「煮干し」
おおまかに言いますと、関西から西では「いりこ」、関東から東では「煮干し」と呼ばれてきました。
とくに瀬戸内の周りでは「いりこ」が通りのよい言葉です。当店にも西日本のお客様が多くいらっしゃいますが、お電話やお問い合わせで「いりこ」とおっしゃる方は、やはり西の方が多い印象です。
もっとも、いまは流通も情報も混ざっていますので、東で「いりこ」と呼ぶ方も、西で「煮干し」と書く店もあります。厳密な線引きがあるわけではありません。
「じゃこ」「だしじゃこ」も、同じものを指します
ほかにも呼び方があります。
- じゃこ、だしじゃこ … 主に西日本で。小さめのものを指すことが多い言葉です
- いりこだし、にぼしだし … だしにしたときの呼び方
- たれ、平子、かえり … これは業界の中での呼び分けで、少し性格が違います
「ちりめんじゃこ」だけは別ものです。あちらは茹でて干した稚魚で、そのまま召し上がるもの。だしを取るための煮干しとは、用途が分かれています。
ただし「いりこ」と呼ぶときは、カタクチが多い
ここが、ややこしいところです。
「煮干し」は、茹でて干した小魚の総称です。ですからアジも、さばも、イカも、鯛も、干せば煮干しです。
いっぽう「いりこ」と呼ばれるときは、カタクチイワシで作ったものを指していることがほとんどです。うるめいわしの煮干しを「いりこ」と呼ぶ方は、あまりいらっしゃいません。
ですので、こう整理していただくと分かりやすいと思います。
| 呼び方 | 指しているもの |
|---|---|
| 煮干し | 茹でて干した小魚ぜんぶ(いわし・アジ・さば・イカ・鯛など) |
| いりこ | そのうち、主にカタクチイワシで作ったもの |
当店が「煮干し」と書いている理由
当店の商品ページは、すべて「煮干し」で統一しています。
理由は、魚の名前をはっきり書きたいからです。「いりこ」と書くと、カタクチなのか、うるめなのか、まいわしなのかが分かりません。「煮干しいわし(かたくちいわし)」と書けば、中身がそのまま伝わります。
当店にはカタクチ以外の煮干しもたくさんあります。そちらと並べたときに、呼び方がそろっていないと、かえって選びにくくなってしまいます。
原材料表示を見れば、魚の名前が分かります
いちばん確かなのは、袋の裏の原材料表示です。当店の煮干しを並べてみます。
| 商品 | 原材料表示 | 産地 | 加工地 |
|---|---|---|---|
| 煮干しいわし(瀬戸内産・特上) | かたくちいわし、塩 | 瀬戸内 | 瀬戸内 |
| 煮干しいわし(長崎産・上) | かたくちいわし、塩 | 長崎県 | 長崎県 |
| 煮干しいわし(大分産) | かたくちいわし、塩 | 大分県 | 大分県 |
| うるめいわし煮干し 小(長崎産) | うるめいわし、塩 | 長崎県 | 長崎県 |
| うるめいわし煮干し(長崎・熊本産) | うるめいわし、塩 | 長崎県・熊本県 | 長崎県・熊本県 |
| 平子煮干し(うるめ・タレ混:熊本産) | まいわし、かたくちいわし、うるめいわし、塩 | 熊本県 | 熊本県 |
| アジ煮干し(長崎産) | アジ、塩 | 長崎県 | 長崎県 |
| さば煮干し(長崎・熊本産) | さば、塩 | 長崎県・熊本県 | 長崎県・熊本県 |
| イカ煮干し(長崎・熊本産) | イカ、塩 | 長崎県・熊本県 | 長崎県・熊本県 |
| エソ煮干し(長崎産) | エソ、塩 | 長崎県 | 長崎県 |
| 鯛煮干し(鳥取産) | 鯛、塩 | 鳥取県 | 鳥取県 |
| カマス煮干し(石川産) | カマス、塩 | 石川県 | 熊本県牛深 |
| キビナゴ煮干し(長崎産) | キビナゴ、塩 | 長崎県 | 長崎県 |
| あさり煮干し(中国産) | あさり、塩 | 中国 | 中国 |
ご覧のとおり、原材料はどれも「魚の名前と塩」だけです。「いりこ」という言葉は、原材料表示には出てきません。表示のきまりでは、魚の名前で書くことになっているからです。
もうひとつ見ていただきたいのが、平子煮干しの原材料です。「まいわし、かたくちいわし、うるめいわし」と三種類が並んでいます。平子は魚の名前ではなく、大きさと形の呼び名だからです。こういうことも、表示を見れば分かります。
カマス煮干しも面白い例で、産地は石川県、加工地は熊本県牛深です。魚が獲れた場所と、煮て干した場所が違うことがあります。
節と煮干しは、別のものです
同じ魚を使っていても、節(ふし)になると原材料表示が変わります。
| 商品 | 原材料表示 | 塩 |
|---|---|---|
| うるめいわし煮干し 小 | うるめいわし、塩 | 入っています |
| うるめ節 | うるめいわし | 入っていません |
| サンマ節 大 | サンマ | 入っていません |
煮干しは塩水で茹でますので、原材料に塩が入ります。節は茹でたあとに乾かし方が違い、塩を使いません。「節」と書いてあれば塩なし、「煮干し」と書いてあれば塩あり。おおよそ、そう見ていただいて差し支えありません。
塩のことは、別の記事で詳しく書いています。
産地で、こんなに変わります
同じカタクチイワシの煮干しでも、獲れた海が違えば、だしの出方も変わります。
当店では瀬戸内・長崎・大分・牛深と、産地別にお取り扱いしています。どこがどう違うのかは、産地ごとに並べた記事がありますので、そちらをご覧ください。
大きさと等級の呼び名
「大羽」「中羽」「小羽」「かえり」。それから「上」「特上」。煮干しには、大きさと等級を表す言葉がいくつもあります。
「タレ」「平子」「白タレ」「青口」といった、業界の中でだけ通じる言葉もあります。こちらは一つずつ整理した記事がありますので、あわせてご覧ください。
ひとつ、お含みおきいただきたいことがあります。「大羽」「中」「小」という大きさの線引きも、「上」「特上」という等級も、当店が決めている基準です。業界で決められた物差しがあるわけではありませんので、よそ様の「上」と当店の「上」が同じ基準とは限りません。
いわし以外の煮干しもあります
先の表でもご覧いただいたとおり、当店にはいわし以外の煮干しが数多くあります。鯛、カマス、エソ、キビナゴ、イカ、あさり。
白身のすっきりしただし、貝の甘み、イカの独特の旨み。それぞれ方向が違います。こちらも一本の記事にまとめてあります。
粉にしたものもあります
煮干しをそのまま粉にしたものも扱っています。だしがらが出ませんので、漉す手間を減らしたい現場でお使いいただいています。
粗さの違い、産地の違い、節の粉との違いは、別の記事に書き分けてあります。
だしの取り方
いりこだし、煮干しだし。呼び方はどちらでも、取り方は同じです。水1リットルに20gからが目安になります。
頭とはらわたを取るかどうか、水出しか火入れか、えぐみを出さないためにどうするか。このあたりは手順を追って書いた記事がありますので、そちらをご覧ください。
業務用でお選びになるときの、三つの考えどころ
ご家庭で使う一袋と、毎日仕込む厨房で使う煮干しとでは、選び方が変わってまいります。当店にお尋ねいただくことの多い順に、三つ挙げます。
ひとつめは、量です。当店は1kgからお納めしていますが、5kg・10kgの箱でお使いになる現場が多くあります。同じ産地のものを続けてお使いになりたい場合は、まとまった量でお取りになるほうが、味のぶれが出にくくなります。
ふたつめは、産地です。同じカタクチイワシでも、瀬戸内・長崎・大分・牛深で性格が変わります。いちど決めた産地を続けるか、季節で変えるか。ここはお店ごとのお考え次第です。
みっつめは、規格です。「上」「特上」といった等級、大きさ、それから「混じり」かどうか。混じりというのは、選別をしていないという意味です。値段が変わりますので、何を選ばれているかを知っておいていただくと、見積もりを見るときの目が変わります。
よくいただくお尋ね
いりこと煮干しで、だしの味は違いますか。
同じものですので、呼び方でだしが変わることはありません。味が変わるのは、魚の種類(かたくち・うるめ・まいわし)と、産地と、大きさによってです。
「いりこ」と書いてある商品はありますか。
当店では「煮干し」で統一しております。魚の名前をはっきりお示ししたいためです。「いりこをお探し」ということでしたら、煮干しいわし(かたくちいわし)の棚をご覧ください。
頭とはらわたは、取ったほうがよいですか。
お作りになるものによります。取れば澄んだだしになり、残せば力の強いだしになります。手順を詳しく書いた記事がありますので、そちらをご覧ください。
いりこは「炒る」から来た言葉ですか。
そう言われることがありますが、当店で確かめたことではありませんので、断言はいたしません。確かなのは、袋の裏の原材料表示に書いてあることだけです。
迷ったときに見る、三つの欄
「いりこ」と書いてあっても「煮干し」と書いてあっても、確かめるところは同じです。
| 見る欄 | 分かること |
|---|---|
| 原材料 | 魚の名前。かたくちか、うるめか、まいわしか。塩が入っているか |
| 産地・加工地 | 魚が獲れた海と、煮て干した場所。この二つは別のことがあります |
| サイズ・等級 | 何センチくらいか、「上」「特上」が付いているか |
当店は原料をお納めする問屋ですので、味づくりのご提案まではしておりません。そのかわり、上の三つはすべて商品ページに書き出しています。在庫と次回入荷の見込み、規格や原材料のことでしたら、いつでもお答えできます。呼び名が違って商品が見つからないときも、遠慮なくお尋ねください。
まとめ
いりこと煮干しは、同じものです。西では「いりこ」、東では「煮干し」。それだけの違いです。
ただし「いりこ」と呼ぶときは、カタクチイワシで作ったものを指していることがほとんどです。中身をはっきりさせたいときは、原材料表示の魚の名前をご覧ください。そこには「いりこ」ではなく、「かたくちいわし」「うるめいわし」と書かれています。
呼び名は地方で変わりますが、袋の裏に書いてあることは変わりません。
商品ページ
- 煮干しいわし(かたくち)の商品一覧はこちら
- うるめ煮干し・平子煮干しの商品一覧はこちら
- さば煮干し・アジ煮干しの商品一覧はこちら
- 鯛煮干し・カマス煮干し・エソ煮干し・タチウオ煮干しの商品一覧はこちら
- イカ煮干し・カニ煮干しの商品一覧はこちら
- あさり煮干しの商品一覧はこちら
- レア煮干し・珍しい煮干しの商品一覧はこちら
- いわし節・うるめ節の商品一覧はこちら
- サンマ節・サンマ煮干しの商品一覧はこちら
- 焼きあご・あご煮干しの商品一覧はこちら
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