煮干しの粉を仕入れようとして、種類の多さに手が止まったことはありませんか。煮干し粉(かたくち)、煮干しパウダー、カタクチいわし節粉末。名前は似ていますが、中身はそれぞれ違います。この記事では、当店が扱っている煮干しの粉を、粗さ・魚の種類・作り方の3つの軸で整理します。

粉には粗さの段階があります
同じカタクチイワシの粉でも、当店には粗さの違うものが並んでいます。
| 粗さ | 商品 |
|---|---|
| 細かい | 煮干し粉(かたくち) 1kg |
| さらに細かい | 煮干しパウダー 1kg |
粗いほうは、口に当たる感じがわずかに残ります。細かいほうは、その当たりがさらに少なくなります。ただし、どちらも丸ごと粉にしたものですので、まったく口に残らないわけではありません。
粗さの違いは、粉にする手間の違いでもあります。細かくするほど工程が増えます。用途に合わせて選んでいただくのがよいと思います。
以前は、もう少し粗い煮干し粉も扱っていました。いまは扱っていません。当店では、より良いものができたときには、古いほうを残さずに切り替えるようにしています。似たものを何段階も並べておくと、お客様が選びにくくなるからです。
「何メッシュですか」にはお答えできません
粉ものを扱っていると、時々このご質問をいただきます。ただ、当店の粉・パウダーについては、お答えのしようがないというのが正直なところです。
メッシュというのは、粉を篩(ふるい)にかけたときの網の目の細かさを表す言い方です。当店の粉・パウダーは、特殊な機械で粉にしています。網の目を通して選り分けているわけではないので、そもそも「何メッシュ」という物差しが当てはまりません。
もうひとつ、煮干しや節は、そもそも粉になりにくい商材です。魚の身には繊維があります。小麦や米のように、さらさらと均一な粉になってくれるものではありません。
ですので当店では、「細かい」「さらに細かい」という言い方をしています。数字でお答えできないのは不親切に映るかもしれませんが、当てはまらない物差しの数字をお出しするより、そのほうが正直だと思っています。
煮干し粉とパウダー、違うのは粗さと産地です

この2つは原材料も栄養成分も同じです。表示はどちらも「かたくちいわし、塩」。違うのは粗さと、原料の産地でした。
| 商品 | 産地 | 加工地 |
|---|---|---|
| 煮干し粉(かたくち) 1kg | 長崎県・熊本県 | 鹿児島県 |
| 煮干しパウダー 1kg | 広島県・愛媛県 | 広島県 |
長崎・熊本と瀬戸内は、どちらも煮干しいわし・いりこの一大生産地として知られる場所です。同じカタクチイワシでも、獲れる海が違えば干し上がりが変わります。
産地が変わると、味わいの方向も変わります
牛深産、長崎産、瀬戸内産と進むにつれて、味わいは優しくなっていきます。これは、背黒系から白タレに向かう流れとよく似ています。
背黒(青口)は干し上がりが青いもので、力強いだしが出ます。白タレは干し上がりが白く、身の柔らかいものです。産地の違いも、これと同じ向きの物差しで見ていただくと分かりやすいと思います。
濃いだしを取りたいのか、優しいだしにしたいのか。そこが決まっていれば、産地から選ぶこともできます。呼び名の詳しい話は煮干しの呼び名の読み方に書いています。
魚の種類で選ぶ
粗さのほかに、もうひとつ大きな軸があります。何の魚を粉にしたか、です。
| 商品 | 原材料 | 産地 |
|---|---|---|
| 煮干し粉(かたくち) 1kg | かたくちいわし、塩 | 長崎県・熊本県 |
| 煮干し粉(うるめ) 1kg | うるめいわし、塩 | 長崎県・熊本県 |
| 煮干し粉(まいわし) 1kg | まいわしの煮干し、塩 | 長崎県 |
| アジ煮干し粉末 1kg | アジ、塩 | 熊本県牛深 |
| あご粉 1kg | とびうお、塩 | 長崎県平戸 |
煮干しの世界では、魚によって呼び名が変わります。カタクチイワシは「タレ」「背黒」「青口」「白口」、まいわしは「平子」、うるめいわしはそのまま「うるめ」。粉になってしまうと見た目では分かりませんので、原材料の欄で見分けます。
煮干しの粉と、節の粉は別のものです

ここがいちばん分かりにくいところかもしれません。同じ棚に並んでいますが、作り方が違います。
節は、いったん煮干しにしてから燻製をかけ、干し上げて作ります。煮干しをもう一段進めたものだとお考えください。ですので、煮干しの粉と節の粉は、原料の魚が同じでも別のものになります。
| 煮干しの粉 | 節の粉 |
|---|---|
| 煮干し粉(かたくち) 1kg | カタクチいわし節粉末 1kg |
| 煮干し粉(まいわし) 1kg | いわし節粉末 1kg |
| 煮干し粉(うるめ) 1kg | うるめ節粉末 1kg |
原材料の表示にも違いが出ます。煮干しの粉には「塩」が入り、節の粉には入りません。袋の裏を見比べると、そこで見分けがつきます。
決定的な違いは、燻製の香りです
味の面でいえば、いちばんの違いは燻製の工程でつく薫香です。煮干しの粉には無い香りが、節の粉にはあります。
といっても、煙臭いわけではありません。魚そのものの味と、脂と、燻製の香り。この3つが合わさって、独特の味わいを作り上げます。だしを引いたときの奥行きが、ひとつ増える感じです。
私の好みを言えば、脂のあるさば節粉末 上、いわし節粉末、うるめ節粉末の甘みが好きです。脂のある魚の節は、香りに加えて甘みが出ます。
すっきりしただしを取りたいときは煮干しの粉、香りと奥行きを足したいときは節の粉。おおまかには、そういう選び方になると思います。両方を合わせて使われるお店もあります。
顆粒だしとは別のものです
当店の粉・パウダーは、原料そのものを粉砕したものです。だしを取ったあとに加工してフリーズドライした顆粒だしとは違い、水に溶けるものではありません。
粉そのものは残りますので、口当たりが気になる用途では、布や細かい網で濾してお使いください。味噌汁やラーメンスープなど、粉が入ったままでも差し支えない料理では、そのままお使いいただけます。
だしの取り方と目安
出汁袋に入れてお使いください。水に5分から10分ほどつけた後、水から炊いて、煮立ったら1分で取り出します。大さじ一杯でみそ汁約2杯分が目安です。
粉にすると、丸のままの煮干しいわしに比べて、だしが早く、たくさん出ます。一晩水に浸けておく必要もありません。仕込みの時間が読みにくい厨房では、そこが効いてきます。
向かないこともあります
良いところと同じ重みで、向かないところも書いておきます。
ひとつ、完全には溶けません。澄んだお吸い物のように、濁りが出ては困る料理には向きません。濾してお使いいただくか、丸のままの煮干しでだしを取るほうが向いています。
ふたつ、そのままかじる使い方には向きません。だしを取るための食材です。
みっつ、粉は空気に触れる面が広いので、丸のままより風味が抜けやすくなります。開けたら早めに使い切るか、下に書いた保管のしかたをご覧ください。
粉にすると、原料が見えなくなります
粉にしてしまうと、何を粉にしたのかは見えなくなります。だからこそ、当店では原料そのものを自分たちで選び、協力工場で粉にしてもらっています。
どの海の、どの時期の、どういう干し上がりのものを使うか。その選び方は、粉になったあとの見た目からは分かりません。分からないところだからこそ、手を抜かないようにしています。
保管のしかた
粉末は酸化が進むと味が変わります。そのために、当店は出荷直前まで冷凍で保管しています。常温で置かれているものに比べ、香りの抜けがありません。この粉末には酸化防止剤を使っていません。
お手元でも、乾物ですが冷蔵をおすすめします。冷凍ならなおよいです。賞味期限は冷蔵で半年です。
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粉・パウダーの一覧
煮干しの粉
煮干し粉(かたくち)/煮干し粉(うるめ)、うるめ節粉/煮干し粉(まいわし・平子)、いわし節粉/鯵煮干し粉、アジ節粉/あご煮干し粉、焼きあご粉
そのほかの粉・パウダー
かつお粉(鰹粉)、鰹節粉/鯖節粉、さば節粉末、鯖煮干し粉/宗田節粉、マグロ節粉/昆布粉末、昆布パウダー/しいたけパウダー、椎茸粉末/エビパウダー、カニパウダー/粉末だし、混合だし
どれを選べばよいか迷われたときは、お気軽にお尋ねください。






