ラーメンのスープに使われる魚介の素材|煮干し・節・魚粉、それぞれの持ち味

ラーメンのスープに使われる魚介の素材|煮干し・節・魚粉、それぞれの持ち味

ラーメンのスープに魚介のだしを使うとき、素材の選び方はとても幅があります。煮干し一つとっても、カタクチイワシ、平子、うるめ、さば、サンマ、あご。節なら、さば節、宗田節、かつお節。そこに「魚粉」と呼ばれる粉があり、海老の頭や貝、昆布も加わります。当店のだし・ラーメンスープ用食材には、こうした素材を原料ごとに分けて並べています。この記事では、ラーメンのスープに使われる魚介の素材を、それぞれの持ち味と、当店の規格表から分かることで整理します。

煮干しいわし(瀬戸内) 1kg ラーメンのスープに使われるカタクチイワシの煮干し

はじめにお断りしておきたいこと

ラーメンのスープは、お店ごとの味そのものです。どの素材をどれだけ使い、何と合わせ、何時間炊くか。そこはお店の方がお決めになるところで、当店から申し上げることではありません。 当店は調理の専門家ではありませんので、スープの作り方の指南はいたしません。

そのかわり、どの素材がどんな原料からどう作られているか、産地と加工地、規格、在庫と入荷の見込みについては、いつでもお答えできます。この記事は、素材の側から見た話としてお読みください。

魚介のだし素材は、大きく五つに分かれます

当店の一覧では、ラーメンのスープに使われる魚介の素材を、次のように分けています。

分け方 主な素材
煮干しのだし 煮干しいわし、うるめ煮干し・平子煮干し、さば煮干し・アジ煮干し、焼きあご・あご煮干し、サンマ煮干し、鯛・カマス・エソ・タチウオ煮干しなど
節のだし いわし節・うるめ節、さば節・宗田節、かつお厚削り・マグロ節厚削り、サンマ節
粉(魚粉) 煮干し粉・節粉・パウダー
甲殻類のだし 海老の頭(甘エビ頭)、干しエビ
海藻・貝のだし 昆布、あさり煮干し、殻付きあさり、干し貝柱

ここから、一つずつ見ていきます。

煮干し ― いちばん種類の多いだし

カタクチイワシの煮干し

ラーメンの「煮干し」と言うと、多くはカタクチイワシの煮干しを指します。原材料欄には「かたくちいわし、塩」と書きます。西日本では「いりこ」とも呼ばれます。いりこと煮干しは、呼び方が分かれただけで同じものです。

カタクチイワシの煮干しには、干し上がりの色で呼び名があります。

呼び名 中身
背黒(青口) 干し上がりが青いもの。力強いだし。背黒と青口は同じもの
白タレ・銀タレ 干し上がりが白い、身の柔らかいもの

産地で、味のやさしさが変わります

カタクチイワシの煮干しは、産地によって味わいが違います。私の感じ方を、そのまま書きます。

牛深産のもの長崎産そして瀬戸内産という感じで優しくなる感じです。基本的に背黒系から白タレに向かう流れとにています。

牛深、長崎、瀬戸内の順に、味わいがやさしくなります。 これは、背黒から白タレに向かう流れと同じ向きです。濃いだしにしたいか、やさしいだしにしたいかで、産地から選ぶこともできます。

商品 当店の説明
煮干しいわし(長崎) 姿(見た目)重視の製造。牛深産に比べ上品な出汁。サイズ6cmから9cm
煮干しいわし(長崎) 上 姿形が整い、色・香りともに力強い
煮干しいわし(瀬戸内) 身が柔らかく、苦味の少ない上品な出汁。プロ用として色目にこだわらず、味と値段で選んだもの

平子とうるめ

カタクチイワシのほかに、よく使われるいわしの煮干しが二つあります。

商品 原材料 当店の説明
平子煮干し まいわし、塩 上品な風味で魚臭さが少ない。つけ麺のお店にも使われている
うるめいわし煮干し うるめいわし、塩 あっさりとした上品な味わい。コクを求める方にも

平子は、まいわしの煮干しです。カタクチイワシの煮干しの値が上がっているとき、平子に切り替えるお店もあります。ただ、魚が違いますので、同じ味にはなりません。

頭とはらわたを取るかどうか

煮干しは、頭やはらわたを取るかどうかで味が変わります。 当店でも、そうお伝えしています。取るとすっきりし、取らないと力が出る、と一般には言われます。どちらにするかは、お店の味づくりのお話です。商品によっては、頭を取ると、さらに澄んだだしが取れます。

いわし以外の煮干し

ラーメンの世界では、いわし以外の煮干しもよく使われます。当店の煮干しのうち、ラーメンによく使われているものを並べます。

商品 原材料 当店の説明
さば煮干し さば、塩 カタクチイワシの煮干しより苦味が少なくコクがある。ラーメンスープの定番食材
サンマ煮干し さんま、塩 燻製香がなく上品なだし。煮干しいわしに比べ魚臭さが少ない。脂のないサンマしか煮干しにできない希少品
焼きあご(平戸産) とびうお 炭火で焼き上げたあご。和食からラーメンまで使われる
カマス煮干し カマス、塩 あっさりとした上品な味わい。最近ラーメン店にも使われている
あさり煮干し あさり、塩 ベースのだしに少し加えて、風味を増すための隠し味に

焼きあごは、焼いて作るため塩が入りません。 煮干しとは作り方が違う素材です。

節 ― 燻製の香りが加わるだし

煮干しは、魚を茹でて干したものです。節は、茹でたあとに燻して干し上げたものです。燻すと香ばしさが付き、煮干しにありがちな臭みが少なくなります。

節 当店の見方
さば節 濃厚でコクのあるだし。かつお節と合わせると、うま味に厚みが出る
宗田節 香りと甘みが強い。さば節よりも個性がはっきりしている
サンマ節 コクがあり甘みがある。ラーメン・うどん・そば店に使われている希少な節
かつお厚削り 香り。すっきりしただし
マグロ節厚削り 燻製の香りが少なく、癖のない上品な旨み

当店のさば節と宗田節は、脂のあるものを選び、頭と腹を取った、形のあるままの節です。削り節のように熱を二度加えていないので、節本来のコクが残ります。そのかわり、割ってから30分以上煮出す手間がかかります。

煮干しの粉と節の粉の違いについて、私はいつも、こうお伝えしています。

煮干しの粉と節の粉の決定的な違いはやはり燻製の過程でつく薫香です。でも煙臭いわけではなく魚と脂と燻製の香りが独特な味わいを作り上げます。

魚粉 ― 当店では、ひとくくりにしていません

ラーメンで「魚粉」と言うと、煮干しや節を粉にしたものを指すことが多いようです。当店にも、一般に魚粉と呼ばれているものはあります。魚介だしの粉末、魚介パウダーと呼ばれるものも同じです。

ただ、当店では「魚粉」とひとくくりにしていません。 魚粉と一言で言っても、その中には原料の違い、味の違い、値段の違いがあります。煮干し、節、焼き干しという作り方の違い。そこにさまざまな魚の組み合わせ。何を粉にしたかで、味も香りもまったく違います。ひとくくりにしてしまうと、その違いが見えなくなってしまいます。

ですから当店では、原料ごとに分けてご用意しています。

粉の分け方 原材料欄の見え方 主な商品
煮干しの粉 魚の名前と「塩」 煮干し粉(かたくち)、煮干し粉(うるめ)、煮干し粉(まいわし)、さば煮干し粉末
節の粉 「○○のふし」 かつお粉 上、さば節パウダー、宗田節粉末、いわし節粉末、サンマ節粉
焼き干しの粉 魚の名前だけ(塩なし) あご煮干し粉・焼きあご粉(焼きあご粉の原材料は「とびうお」)

出荷量の多い三つ

参考までに、当店で出荷量が多い粉は、煮干し粉(かたくち)、かつお粉 上、さば節パウダーの三つです。ただしこれは出荷量の話であって、お店に合うかどうかは別の話です。

粉にすると、原料が見えなくなります

当店が粉のことでいちばん大事にしている考え方です。

粉にしてしまうと、何を原料にしているかが分からなくなります。頭やヒレばかりを粉にしたものでも、見た目では見分けがつきません。 だからこそ当店は、原料そのものを自分たちで選び、協力工場で粉にしてもらっています。原料の産地も、商品ページにすべて書き出しています。

粉は水に溶けません

当店の粉・パウダーは、原料そのものを粉にしたものです。だしを取ったあとに加工してフリーズドライした顆粒だしとは違い、水に溶けるものではありません。

粉そのものは残りますので、口当たりが気になる料理では、布や細かい網で濾してお使いください。味噌汁やラーメンスープなど、粉が入ったままでも差し支えない料理では、そのままお使いいただけます。粉を残すか濾すかは、お店の方がお決めになるところです。

粗さのこと

「何メッシュですか」とお尋ねをいただくことがあります。当店の粉・パウダーは特殊な機械で粉にしていて、篩(ふるい)にかけて選り分けているわけではありません。そのため「何メッシュ」という物差しが当てはまらず、数字でお答えすることができません。 煮干しや節は繊維があり、そもそも粉になりにくい素材です。当店では「細かい」「さらに細かい」という言い方をしています。「粉末」より「パウダー」のほうが細かい、と覚えていただくと分かりやすいと思います。

海老と貝、昆布

海老の頭(甘エビ頭)

海老の頭(甘エビ頭)は、刺身用に使われる甘エビの頭だけを、急速個別冷凍(IQF)で凍らせたものです。ミソの旨味で、濃厚なだしが取れます。冷凍でお送りする商品です。

貝

あさり煮干しは、あさりの剥き身だけを煮干しにしたものです。ラーメンのスープなどのベースのだしに少し加えて、風味を増すための隠し味としてお使いいただいています。

昆布

一般に、昆布のうま味(グルタミン酸)と、煮干しや節のうま味(イノシン酸)を合わせると、味が伸びると言われています。昆布は、魚介のだしと合わせて使われることの多い素材です。

形で選ぶ ― 丸のまま・厚削り・粉

同じ原料でも、形によって使い勝手が変わります。当店の一覧に書いていることを並べます。

形 向いている場面 気をつけること
丸のまま(煮干し・節) じっくり時間をかけてだしを取りたいとき 頭やはらわたを取るかどうかで味が変わる。だしがらの処理が要る
厚削り 丸のままより早くだしを出したいとき 30分以上煮出す
粉・パウダー(魚粉) 短い時間でしっかりだしを出したいとき。グラム単位で量を合わせたいとき 水に溶けない。口当たりが気になるときは濾す

粉は、表面が広いぶん、短い時間でしっかりだしが出ます。グラム単位で量を合わせられるので、1杯あたりの原価が読めます。 かさばらないので、保管の場所も取りません。当店の一覧に書いている、粉の良いところです。

粉の取り方は、当店の粉・パウダーに共通して、出汁袋に入れて水に5分から10分ほど浸け、水から炊き、煮立ったら1分ほどで取り出す、です。丸のままより早く、たくさんだしが出ます。

煮干しの値段のこと

カタクチイワシの煮干しは、水揚げの多い少ないで値が大きく動く素材です。値が動くときに起きていることは、別の記事に書きました。

保管は、冷蔵か冷凍で

煮干しも節も、常温に置くと香りが抜けていきます。当店は、出荷直前まで冷凍で保管しています。営業冷蔵庫では-25℃以下、出荷直前まで-15℃で保管しています。

乾物は酸化が進むと味が変わります。脂のある煮干しや節は、なおさらです。お手元に届きましたら、冷蔵庫か冷凍庫で保管してください。

向かないこと、気をつけていただきたいこと

  • 粉は水に溶けません。 顆粒のだしの素とは別のものです
  • 粉には、ごくまれに小骨が混じることがあります。 天然の魚から作るためです
  • 同じ商品でも、入荷ごとに色や大きさが変わります。 煮干しいわし(瀬戸内)のように、サイズではなく味と値段で仕入れているものもあります
  • レア煮干し・レア節は、いつもあるとは限りません。 サンマ煮干しは、脂のないサンマしか煮干しにできないため、数年作れないこともあります
  • 冷凍でお送りする商品があります。 海老の頭(甘エビ頭)は冷凍便です

よくいただくお尋ね

「魚粉」で探しても、見つかりません

当店では「魚粉」とひとくくりにせず、原料ごとの名前で並べています。魚粉・煮干し粉・パウダーの一覧からお探しください。煮干しを粉にしたものは「煮干し粉」、節を粉にしたものは「○○節粉末」「○○節パウダー」という名前です。

ラーメン用の魚粉は、どれですか

ラーメン専用という粉は、当店にはありません。どの粉も、だしの素材としてお使いいただけるものです。どれを選ぶかは、お店の方がお決めになるところです。そのかわり、原料・産地・加工地・粗さは、それぞれの商品ページにすべて書き出しています。

煮干しラーメンには、どの煮干しが使われていますか

お店によってさまざまで、当店から一つに決めて申し上げることはできません。どの煮干しを使うかは、お店の味そのものです。そのかわり、魚の種類・産地・大きさ・頭の有無は、それぞれの商品ページに書き出しています。

煮干しと節、どちらがよいですか

燻製の香りがあるのが節、ないのが煮干しです。原材料欄では、煮干しには「塩」が入ります。節は、かつお節や宗田節のように塩の入らないものと、いわし節・うるめ節・サンマ節のように煮干しから仕上げるため塩の入るものがあります。どちらを使うか、両方使うかは、お店の方がお決めになるところです。

業務用の量で買えますか

煮干し・節ともに、大きな規格をご用意しているものがあります。どの規格があるかは、商品ページの「容量をお選びいただけます」の欄でご覧いただけます。

まとめ ― 素材を知ることは、選ぶ材料になります

ラーメンのスープに使われる魚介の素材について、当店がはっきり申し上げられることは次のとおりです。

  • カタクチイワシの煮干しは、牛深、長崎、瀬戸内の順に味わいがやさしくなること
  • 煮干しと節の違いは燻製の香りであること。節にも、煮干しから仕上げて塩の入るものがあること
  • 当店では魚粉をひとくくりにせず、原料ごとに分けていること
  • 粉にすると原料が見えなくなるので、原料を自分たちで選んでいること
  • 粉は水に溶けないこと。「何メッシュ」という物差しが当てはまらないこと
  • 出荷直前まで冷凍で保管していること

迷ったときに見る、三つの欄

見る欄 分かること
原材料 魚の名前と「塩」なら煮干しか、煮干しから仕上げた節(いわし節・うるめ節・サンマ節など)。「○○のふし」なら節の粉。魚の名前だけなら節か焼き干し
商品名の「粉」と「パウダー」 当店では、パウダーのほうが細かい
産地・加工地 魚が獲れた場所と、煮干しや節、粉に仕上げた場所

当店は原料をお納めする問屋ですので、味づくりのご提案まではしておりません。そのかわり、上の三つは商品ページにすべて書き出しています。在庫と次回入荷の見込み、規格についても、いつでもお答えできます。お作りになるものに合わせてお選びいただけるよう、隠さずに並べておくのが、私どもの仕事だと思っています。

当店で扱っている、ラーメンのスープ用の魚介の素材

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